170129 生前退位

○背景
昨年、陛下が「生前退位」のご意向を発表された。自身のご高齢による公務への不安や、あらたに皇位を継承される皇太子への配慮からくる発表だったと思われる。
 
○論点
政府は、生前退位を実現させるのであれば、どういった影響があるのか、法整備が必要なのか有識者へのヒアリングを行った。
議論が始まった当初、論点とされていたのは、
 ①憲法における天皇の役割
 ②公務のあり方
 ③高齢の場合の負担軽減策
 ④〝摂政”の設置
 ⑤国事行為の委任
 ⑥天皇の退位
 ⑦退位の適用範囲
 ⑧退位後の身分・活動
 
このあと、この話はさらに具体的な議論におよび最近では、退位の時期や、退位後の元号をいつ発表するかなどの報道も見られるようになった。陛下がご高齢ということもあり、議論を速やかに進めなければいけないというのは疑いの余地がない。
 
しかし、これらの論点には、「なぜ天皇がそういったお気持ちの発表に追い込まれたか?」という部分はなく、国民が好意的な反応を示していることもあり退位を既定路線として話が進められている感がある。
 
たしかに生前の皇位継承皇室典範では認められていないし、実現するとなれば社会への影響も大きい。
だが、そもそも、こういったことが問題となることが問題なのだ。
 
上記にあげたような論点を整理し、実際に運用していくうえで法整備も必要だろう。しかし一方で、現状にあわせた天皇制を構築していくことも忘れてはならない。今回は時間がなく、一代限りとする方向に話はすすんでいるが、その議論の火を絶やすようなことをしてはならない。女性天皇の話など、皇室のありかたについては、議論を熟成させていく必要を感じる。
 
天皇は生まれながらにその重責を背負っている。いわば基本的人権の範囲外の存在に近い。これまでは何があっても天皇天皇であった。これからもそうなるのか、議論を経ることでそれが変わっていくのか。
皇室の問題は、少子高齢化という日本が抱える問題の縮図である。ここで何らかの解決策を示していくことが将来世代への責任だと思う。
 
この問題は、近い将来、必ず再燃する問題だ。そのときに慌てないよう対策しなければならない。