文科省の天下り問題

○今回の事件
文部科学省の前高等教育局長が、監督するべき団体である大学に天下りをしていたことが問題になっている。
文部科学省の退職2ヶ月後に、OBの口利きなどで教授として早稲田大学に着任していた。再就職等監視委員会の指摘で発覚した。
 
天下り、なぜダメなのか
こういった報道があるたびに「天下りはダメだ」。その一言で片付けられる。関係団体との癒着や、天下り先を増やすために外郭団体が増えているのではないか、天下り先での労働実態がないのに給与や退職金の待遇面で優遇されるぎ、といった指摘をうけ、天下りはイケナイ行為ということになっている。天下りを容認するべきではないが、これまでは人的資源を調整するという側面があり、役人の都合からすると必要悪だった感は否めない。
 
○これまでの規制の経過と現状
天下りに対する強い批判をうけ、2008年に政府は再就職等監視委員会を設け、規制を強化してきた。しかし今回のように組織的な天下りを防ぐことはできなかった。ちなみに、明らかに規制の対象となっているのは、監督するべき団体への天下りのみで、それ以外の団体への天下りは規制の対象となっていない。また、今回の手口となったOBを経由しての口利きなども規制外の行為である。
 
○今後どうするか
・公務員の待遇改善
公務員には、トップクラスの大学から優秀な人材が集まってくる。仕事の質はともかくとして、彼らは霞が関不夜城で残業をこなし体をボロボロにしながら働いている。しかし、ある程度の年次になると自らの席がなくなってくると聴く。そうした構造から生まれたのが「天下り」なのだ。外郭団体や民間企業に席を求めるくらいなら、彼らがその経験を活かし最後まで勤め上げられるような、体制を整え待遇を改善していくことも、ひとつの解決策である。
 
・公務員の質
国家運営にあたって職員の質がどれだけ求められるのか。欧米では優秀な人材は、民間企業に進むというのがセオリーである。ある官僚が海外に研修留学に行った際、「お前のような優秀な人材が公務員をやっているようでは日本は終わりだ」と言われたことがあるそうだ。そういったある意味ミスマッチともとれるような過度な人材の質を改めていくことも必要なのではないか。
 
・身のある天下り
そもそも日本の公務員は優秀な人が多い。そういった人たちが、天下り先で埋もれることなくきちんと人材として活用されれば、費用対効果の面から考えても何の問題もないような気がする。天下りという行為に問題があるのではなく、下ったあとの人材を民間企業も厳しい目で監視をしながら活用していくことが求められる。